Rich More(リッチモア)2023年春夏&秋冬シリーズのご紹介 ① 【編み物】【棒針編み】【かぎ針編み】



皆さんこんにちは、スザンナです。

またまた書籍のご案内です。

今までは、海外のデザイナーさんや海外の毛糸会社さんによる書籍のご紹介が多かったのですが、今回は日本の書籍のご紹介ですので、パターンの英語に苦しむ必要もなく、また編みたくなったらすぐに同じ毛糸を手に入れることができて大変便利です。デザインも洗練された編み物フリークさんの満足を満たしてくれる内容となっています。
 
今回ご紹介するのは、高級毛糸でおなじみのリッチモアさんから年に2回発行されているパターン本です。
 
2023年は、ウクライナとロシアによる戦争の影響か、第一次世界大戦や第二次世界大戦の頃に活躍されたヨーロッパのアーティストにフォーカスが当てられています。
春夏シリーズでは、戦争の悲惨さを描いた絵「ゲルニカ」や、カラフルで余分なものをそぎ落とした現代アートの代名詞パブロ・ピカソをイメージした糸やデザインとなっております。
 
さて、せっかくなので私もピカソにまつわる話を少し。
ピカソとルノワールは生きている間に大成功し時代の寵児となった画家。
映画「モディリアーニ」でもライバルとして登場し、モディリアーニとともにルノワールが住む大豪邸に会いに行くシーンはとても印象的です。
2人の成功者に挟まれたモディリアーニを見ていますと、成功とは、才能が有るか無いか、よりも、認められるか認められないか、に成功がかかっていると言っても過言ではありません。
奇しくもモディリアーニは生きている間にはそれほど恵まれず若くで亡くなりましたが、亡くなった後、彼の描いた絵、特に、目が描かれた絵は数が少なく希少だったこともあり、またあとで述べるようにピカソが亡くなってからモディリアーニの才能が世間的にも認められたことも加味され、サザビーで史上最高額の40億円で落札されたのが彼の絵であることは皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか。
私は生きていることが苦しくなるたび、モディリアーニやゴッホ、イエス、太宰治を思い出すようにしています。
ピカソが亡くなる間際に発した最後の言葉は、「モディリアーニ」でした。何人もの女性を奥さんとし、才能も認められ人生を謳歌したように思われるピカソですが、死ぬまで一度も忘れることが出来なかったのは、女性でも成功でもなく、絶対的なライバルの存在だったのですね。
 
モディリアーニ 真実の愛 [DVD]
モディリアーニ 真実の愛 [DVD]

話が逸れてしまいますけど、モディリアーニや太宰治が時代を経て評価が高まっているのは、彼らがその時代よりもはるか先の未来的な感覚を持ち合わせていた、というのもあるでしょうが、それ以上に、世間に認められない苦しみとたたかい抜き、才能では食べていけないにも関わらず、その才能を捨てきれずに死ぬまで耐えながら頑張り続けたからこそ生まれる切実な言葉にはならないうめき声のようなものを感じるからなのだと思います。彼らは決して100年後に認められるだろう、などと思っていなかったと思いますし、ただただその瞬間瞬間を必死に生きていたと思います。なぜそう思うかというと、私も同じように感じる部分があるからです。

 

太宰と同様自決した三島由紀夫に対して、同じ感覚を持てないのは、彼は自分の理想が社会的風潮によって、また国の憲法によって否定されたことに怒りを感じていただけに過ぎず、もっと本質的な部分である、作家や画家として才能でお金を稼いで、そのお金で家族を養って苦労させない、という根本的な土台の部分は満たされていたからかもしれません。だから自分の理想が終戦とともに終わってしまって可哀そうだとは思うのですが、なんでだからって死のうとまで思ったん?と思えてならないのです。
そこに絢爛豪華な文章の三島由紀夫と、ギリシャや聖書を題材にしながらも出てくる登場人物になぜか親近感を覚えてしまう太宰治の「心の内側が丸聞こえの文章」とには違いがあるように思います。
 
 
 
 

太宰治がすたこらサッチャンと心中した理由も何となくわかるような気がします。お見合い結婚した奥さんには生活を支えてもらってるものの彼女の心の奥でくすぶっている不平不満がちらほら見え隠れし、愛人は大金持ちの上流階級の娘でちょっと上から目線なだけでなく作家としても太宰と同レベルかそれ以上だと勘違いしてる。二人はまるでイエスに憧れながらイエスを軽蔑していたユダ・イスカリオテのよう。ただサッチャンだけが、小説も全然理解できないし教養も低いサッチャンだけが、ラザロの妹のマリアのように、先生、先生、と心の底から尊敬してナルド油を注いでくれる。純粋に慕ってくれる。不成功を悲しがってくれる。ずっとついていくと言ってくれる。うれしかったでしょうね。初めて愛されている気がしたことでしょう。認めてもらえる、とはこういうことか、と思ったことでしょう。

 

奥さんに書き取らせた「駆け込み訴え」 収録

 

 

さらっと東大に合格した名実ともに才能にあふれる芥川龍之介とは異なり、太宰は東大入学も大金持ちの親のコネ。

しかもその憧れる芥川賞の第1回に応募し、「薬もアルコールもやめてようやくまともになれる起死回生のチャンス」と考えていた太宰を落選させたのが審査委員長の川端康成。

その川端康成を慕う三島由紀夫には飲み屋で「あなたの文章なんて大っ嫌い」と言われ。

こうなると自分の才能に自信が無くなります。

本当は、「酒や薬におぼれているような精神状態の人間には、いくらいい話でも、社会通念上、賞を渡せない、まずは生活を立て直すことから始めなさい」、と川端は単純に判断したのであり、文才がない、という判断ではなかった。

また、川端は確かに一方的に慕ってくる三島から太宰の斜陽に関する悪口を書いた手紙を受け取っていたけれど、彼と一緒になって太宰の悪口を言ってたわけではなかった。

私が知る範囲において川端康成さんはとても人格者です。でも、そこにすべてをかけていて次のことまで余裕のなかった太宰は、1回目で逃したチャンスの大きさに凹んだでしょうね。余計酒と薬に走ったでしょうね。

 

伊豆の踊子

 

 

私は逃げ場所がなかったので境遇を我慢するしかありませんでしたが、もし私がお酒や薬を好きだったらどうなってただろう、って思うと怖いです。そして、神は本当にいるのだろうか、神は本当に公平な方なのだろうか?と太宰も思ったのでしょう。

 

三島由紀夫が川端康成に叙事詩ではないとチクった「斜陽」

 

 

彼の聖書の読解力には切実なものを感じます。「あの方といったらせっかく入ってきたお金をパーっと使ってしまうほどに欲がない。」とは、おそらくイエスではなく太宰自身を言い表した言葉でしょう。そのユダ・イスカリオテ目線のイエスについての話を奥さんに書き取らせた、というのですから、太宰もなかなかの策士です。奥さんは背筋がヒヤッとしたというようなことを言ってましたが、「お前さんにも苦労をかけるね。だけど、寂しいときに寂しそうな顔をしてはいけない。」というイエスからユダへの言葉を書き取らされ、自分の気持ちが筒抜けであることを言い当てられてゾクッとしたのでしょう。

サッチャンは親が出資してくれた美容院で一生懸命若いころから働いて、コツコツ貯めたお金をあっという間に太宰につぎ込んでしまった。お金がなければ太宰はまたどこかへ行ってしまう。それが怖かったと思います。

太宰もサッチャンのお金がどういうお金か分かってました。だけど自分に負けて彼女のお金を全部使ってしまった。

お互い、もうあげれるものが命しかない。

しかも太宰は何度も小説で死を描き、いつも「俺はもう死ぬ」と言っていた。やらなきゃメンツも立たない。そういう気持ちだったのだと思います。

 

 

太宰が唯一甘えることが出来た人

 

 

さて、みなさん。

ここで少し考えてみてください。

 

こういうドロドロの話は確かに胸にぐっと来ますが、これを編み物にできますでしょうか?

何色もの毛糸で夢の世界を表現できますか?

 

これ、結構大切なポイントだと思うんですよ。

 

こういう話は、実際にあったお話としてそうそうたるメンバーによる書物を読むからスケールが大きく豪華になるのであって、じゃあこの悲惨さをイメージして、セーターにしてみよう、スカーフにしてみよう、って思った時に、全く美しくないんですよね。

 

人間の鬱積したどろどろとした汚い側面がにじみ出たような服、着れますか?

 

そのマフラー、首に巻けますか?

 

首を絞められそうですよね。

 

「恨みつらみ」「あきらめ」「悲惨」「心中」なんて名前のパターンが売れると思いますか?

 

もうホラーでしかありません。

 

 

だから、私は根っこの部分は太宰やモディリアーニと同じなんですけれども、仕事をする際には、それらを表に出さないことにしてるんです。

編み物の世界は夢を売る世界だ、ということをいつも念頭に置き、そして私の作品を楽しみにしてくれている人たちはその夢の世界を楽しみに待っていてくれる人たちである、と思っています。

 

そして、それを徹底するから、ピカソも、この後に登場する人たちも伝説となれるのではないかと思うのです。

仕事を徹底する、ということは、自分を捨てる、ということでもあるのでしょう。

 

 

というわけで、長くなりましたが、サラっとこのピカソシリーズについてご紹介していきたいと思います。

 

 

「20世紀最大の芸術家」と呼ばれるパブロ・ピカソ。

スペインが生んだ天才画家はその人生とリンクするように、一つの定義には当てはまらない斬新な作風を生み出しました。

ピカソを語る上で欠かせない「キュビズム(立体主義)」は、奇抜でよくわからない絵というイメージがありますが、
そこに至る工程を知ると、それらは単なる抽象画ではなく、計算されつくした具象画であることがわかります。

従来の写実主義から解放され、対象の本質を見据えながらも自由な色彩で奔放に筆を走らせたピカソ。
享年91歳という人生の中で、彼は描写のテイストが違ういくつもの時代を築いてきました。

没後50年を経た今、その多彩な造形思考が改めて注目されています。

2023年春夏リッチモアは、ピカソの様々な表現スタイルをイメージソースとしてシーズン展開をしました。

 

表紙

使用毛糸の紹介とコンセプト
マニッシュな中に美しさのあるシックなデザイン
スペインの風を感じるリゾートウェア
ゲルニカ色とキュービズム
ニュアンスカラーが繊細なショール
さっと羽織れて着心地の良いポンチョベスト
青の時代らしいモダンなデザイン
エレガントな中にアールヌーヴォー的な雰囲気
シックなベージュだからこそ映える美しいモチーフと編み目




お求めはこちら

 

 さて、一回では書ききれなかったので、次回はまた次のブログでお話しましょう。

次は、サラ・ベルナールとマリア・カラスについてです。

リッチモア 2023年秋冬シリーズのご紹介はこちら

 

最後までお付き合いありがとうございました😊 また次回もお会いしましょう。

動画のチャンネル登録もお待ちしております。 

https://www.youtube.com/channel/UCVMDtt8AY2J8XyzlZ-WYe6A

スザンナのお店はこちら 

https://www.yoneyamadou.com/page1.html

人気の投稿